「プロフェッサーしし丸の講義」 ’01年2月20日
「それでは138ページを開いて下さい。
今日は『フェルマーの最終定理』について学ぶことにします。
フェルマーの最終定理はこのように実に単純な数式ですが、これを証明することはきわめて難解な作業であり、ごく最近までこの定理を証明することは不可能なのではないかと思われていました」
というふうにプロフェッサーしし丸が講義を行なっているように見えますが。
ほんとうのことを言えば、この本を読んでいたのは私であって、しし丸は邪魔をしていただけなのです。
つい先ほどまでしし丸は本の向こう側で手足を思いきり伸ばして寝ていました。
しかも、しし丸は眠りながら本や電卓などを頭や足で押しやって、テーブルの端から落としていたのです。
コーヒーカップをひっくりかえされて本を濡らしてしまったりしたら大変ですから、私はひやひやしていました。
本に熱中していたり、必死にワープロのキーを叩いていたりすると時々「ガチャン!」とか「バサッ!」といった音が響いて来て、そのたびに私はびっくりさせられていました。
それでもたいていしし丸本人はそのまま寝続けているのです。
でも、時には驚きあわててとび起き、キョロキョロとあたりを見まわすこともあります。
この時もそんなふうにとび起きた後でした。
そして、まるで私がやかましい音をたててしし丸を起こしてしまったとでもいうふうに、抗議の目つきで私を見ていたのでした。
まったくとんでもないヤツなのです。